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〈過労死〉から逃げろ!・・・あなたと、あなたの大切な人の命を守るために【医療現場】

 

過酷な職場環境による、〈過労死〉や〈自殺〉の問題があとを絶ちません。

 

〈医療〉の世界でもその過酷な勤務状況が問題になっています。

 

今回は、医療現場における〈過労死〉の問題を書いてみたいと思います。

 

Contents 目次

1、過酷な医療現場の実例

 

1、医療現場では、以前から過酷な状況があった

 

最近は、新型コロナの蔓延により、病院が大変な状態になっています。

 

重症患者数の増加によって、医療従事者不足と病床の不足から医療体制が逼迫している状況にあります。

 

そうした中、医療従事者の人たちは、必死になって闘っている状況です。

 

しかし新型コロナが流行するずっと以前から、医療の世界では、過酷な勤務状況が問題となっていました。

 

 

ここではまず、その一例を挙げてみます。

 

2、ある小児科医の遺書 

 

1999年8月、東京都内の病院に勤める小児科医・中原利郎医師(部長)は、病院の屋上から飛び降りてなくなりました。

過重労働による過労からウツ病を発症していました。

享年44才でした。

 

遺書には次のように書かれていました。

 

検査にしても協力が得にくい小児の場合には、泣いたりわめいたりする子供をなだめながら実施しなくてはなりません。
現行の医療保険制度はこのように手間も人手もかかる小児医療に十分な配慮を払っているとは言えないと思います。
現在は、常勤4名体制で、ほぼ全日の小児科単科当直、更には月1〜2回、東京都の乳幼児特殊救急事業に協力しています。
急患患者では、小児の方が内科患者を上回っており、私のように四十路半ばの身には、月5〜6回の当直勤務はこたえます。
また、看護婦・事務職員を含めスタッフには疲労蓄積の様子が見て取れ、これが“医療ミス”の原因になってはと、ハラハラ毎日の業務を遂行している状態です。
本年1月には、朝日新聞に、私の大学時代の同級生の“過労死”のニュースが報じられました。
(これは現場の我々には大変ショックでした)。
間もなく21世紀を迎えます。
経済大国日本の首都で行われているあまりに貧弱な小児医療
不十分な人員と陳腐化した設備のもとで行われている、その名に値しない(その場しのぎの)救急・災害医療。
この閉塞感の中で私には医師という職業を続けていく気力も体力もありません。

 

このように、中原医師は、不十分な医療体制のもとで、患者のために必死になって闘ってきた、その苦しみを綴っています。

 

3、責任感が強かった医師の、悲しい結末

 

中原医師は責任感が強く患者の信頼が厚かったと言います。

 

彼は、一般外来、専門外来、入院患者の担当、休日夜間診察の当直、看護学校の講師などを業務として行なっていました。

さらに外勤の非常勤医師の診察や看護師の処置に対するチェックも行なっていようです。

 

亡くなる7ヶ月前には常勤の他のベテラン医師が退職。

3月には常勤の医師が実質的に半減してしまい、月に8回もの当直勤務をせざるをえなくなったようです。

 

4月になると、当直明けでなくても大変疲れ切った様子で、帰宅するとすぐに横になることが多くなったといいます。

自宅では電話の音がなると過敏に反応するようになり、本当にくつろげる状態にはなれなかった。

 

 

このように長期間、過度のストレスによる睡眠不足が続いていると、家でも常に気分が高ぶっている状態になります

眠たくとも眠れない状態になってしまうのです。

 

5月になると、部長会議の前日には特に神経質になり、「会議に出るのが怖い」と家で泣くようになったそうです。

 

さらに、好きなサッカーの雑誌にも関心を示さなくなってきました。

 

6月には、自宅でも職場でも怒りっぽく不機嫌な状態が続き、長男にまくしたてたり、嘔吐したりするなどの明らかな異常な言動が目立つようになってきました。

 

そして、8月の半ばに、とうとう一線を超えてしまったのです。

 

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4、〈慢性的な医師の不足〉という構造的な問題

 

医師の過酷な勤務状態は、当然、医療の質の低下につながる恐れが高まります。

 

統計では、過重労働により、実際に医療ミスを起こしてしまった場合もあれば、それに近いニアミスもしばしば報告されているようです。

 

中原医師の場合は、その超人的な意思の強さと努力により、医療事故は起きなかったようです。

 

ですが、彼自身が自らの命を削るという悲しい結果になってしまいました。

 

 

現在でも医療現場ではこのような過酷な状況が続いています。

 

その背景には、

慢性的な医師の不足など、すぐには改善されない構造的な問題がある

のです。

 

特に外科・小児科・産婦人科では過酷な勤務条件と医療訴訟の多さが影響して、医師のなり手が少ないそうです。

 

このようにして、ますますの悪循環になっていくのです。

 

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2、同僚が退職して、ますます逃げられなくなる

 

1、そして、心身の喪失状態に

 

ここで見られるように、同僚の勤務者(この場合は医師)が過酷な現場を辞めれば、残った他の人がよりきつい重荷を背負うことになります。

そして、残った人は、その〈責任感〉から、ますますそこから抜け出せなくなるという状態になるのがわかります。

 

特に医師の場合は人の健康に関わる仕事であるため、〈責任感〉が強い人が多い。

 

だから「辞めたい」という気持ちを心の奥にしまいこみ、必死に働いている状態になります。

 

 

ここに見られるのは、いわゆる〈ブラック企業〉における過酷な労働現場とは、まったく質的に違った状況です。

医療現場においては、病に苦しむ人のために何とかしなければいけない、という自己犠牲の精神があります。

 

しかし、そうは言ってもさらに長時間労働が何ヶ月も続くと、しだいに仕事以外のことが考えられなくなってくるのは当然です。

 

これはいわば「心神の喪失」という状態に陥ります。

すでにこの段階で、かなり危ない状態になっているのです。

 

中原医師が5月になると好きなサッカーの雑誌に関心をしますことがなくなったのは、まさにこの状態です。

 

 

そして、自らの心身の健康状態を省みて、なんとか工夫して「休む」「休養をとる」ということすら、思考が及ばない状態になってしまうのです。

 

ましては「仕事を辞める」ということは、なおさら考えに及ばなくなってしまいます。

 

2、努力できる人が、危ないという矛盾 

 

体力があって、意思が強い人ほど、過酷な状況に耐え抜こうとして努力を続けます。

そして、実際に何ヶ月も、その過酷な状況で過ごすのです。

 

でも、人間には限界があります。

 

 

〈過労死〉する前に、「運良く?」働けなくなるほどに体調を崩してしまえれば良いのですが。

そのまま過労が蓄積した場合、身体的には〈過労死〉をすることになるのです。

あるいは、精神の病に陥り、自らの命を絶つという結果になってしまいます。

 

こうした状態になる前に大切なことは、自らの“命”を守ることなのです。

 

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3、〈茹でガエル〉にならないために

 

〈茹でガエルの実験〉というお話をご存知でしょうか?

これは有名な話ですが、次のようなものです。

 

熱湯が入ったボールの中にカエルを入れると、カエルは驚いて飛び出します(生き残れる)。

ところが、今度は、最初は水の中にカエルを入れて、徐々にボールごと水を温めていきます。

すると、最後にはカエルはそのまま茹で上がってしまい、死んでしまうというのです。

(もっともこのお話、実際のカエルの実験では、カエルは飛び出すこともあるそうです。)

 

このお話のように、私たちは知らず知らずのうちに〈茹でガエル〉になってしまわないようにしなければなりません。

 

 

「〈責任感〉を発揮してどこまでもこのままの状態で我慢して続けていくべきか、あるいは、我が身を守るべきか」

この判断は難しいかも知れません。

 

〈茹でガエル〉になってしまい、判断力がなくなってしまう前に、しっかりと自分の中で考えておく必要があります。

 

4、「辞める」ことが、本当の〈責任感〉だ

 

1、どこまで頑張るか、を決めておく 

 

死んでしまえば、それこそ責任を果たせなくなります。

 

そうである以上、あるところで、

「ここまでを超えたら、辞める(休む)」と言ったように、自分で区切りをつけておく

ことです。

 

勇気がいるでしょうが、それが本当の〈責任感〉なのです。

 

難しいかも知れませんが、きっぱりと「辞める」という英断を下すことです。

 

 

具体的な方法としては、次の方法があります。

 

1、自分で決めた「区切り」を超える前には、あらかじめ、「これこれこうなれば、これ以上は無理です」と、上司や同僚に「辞める」を予告し伝えておくことです。 

2、そして、いよいよ自分で決めた「区切り」に達しそうならば、具体的な期限をつけて、「辞める」を伝えます。

 死んでしまってはどうしようもないからです。

 具合的に辞める日を指摘して、「辞める」の意思を伝えることによって、これだけでも職場環境の何かの変化を期待できます。

3、さらにその場合、「内容証明郵便」で、文章で伝えると、より効果的です。

 口頭で告げるだけよりも、周囲の人を動かす効果が期待できるでしょう。

 

ここで、法律上、辞める場合は2週間前から指定できます。

民法627条1項により、2週間前までに「辞めます」と言っておけば、辞めることができるのです。

 

ココがポイント

民法627条1項

「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをする事ができる。

この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から二週間を経過することによって終了する」とあります。  

 

2週間後に辞めるのが心苦しいのならば、1〜数ヶ月後の「○月○日に退職する」と、具体的な日を指摘して伝えるとよいでしょう。

 

2、弁護士を通して対応する

 

ここで、法律事務所を通して弁護士より〈退職〉の意向を伝えると効果的です。

 

弁護士が介入することにより、上司や組織は、より深くこの問題を受け止めるようになります。

 

そうすることによって、その職場環境の問題をより掘り下げて、解決を迫ることが出来やすくなります。

 

医療現場のような、日本社会全体の構造的な問題がある場合は、自分だけで問題を抱え込むのは良くありません。

 

同じ苦しみを抱えている人がたくさんいるわけです。

 

 

特に医療現場や学校教員といった、「先生」と呼ばれる職業は、医療・教育の充実という時代の要請に見合うだけの人員の確保が難しいため、過重労働が続いている状態です。

 

自分自身の苦しい状況を、社会全体にアピールすることも考える方が良いでしょう。

 

くれぐれも、〈責任感〉により努力・我慢をする、ことはしないようにしなければいけません。

 

何度も言うようですが、死んでしまっては、それこそ本当に責任を果たせなくなるからです。

 

もっと広い視野で、長い目で見て考えましょう。

 

心身の健康を保って、末長く仕事を続けていくようにできることが、一番の〈責任感〉なのです。

 

 

5、たった今から、自分を変えましょう

 

〈責任感〉が強くて素晴らしい人ほど、上に挙げたような過酷な職場状況では、ますます深みにはまってしまいます。

同僚が辞めれば、さらに状況は悪化していきます。

そして最後には自ら死の転帰をとることが少なくありません。

 

ここで考え方を変えていく必要があるのです。

 

そもそも〈責任〉とは何でしょう?

 

本当に死んでしまっては、〈責任〉を果たすことができない

ということです。

 

 

こうした危機的状況になっていること自体が、あなたは(そして、ご家族も)根本的に、人生の方向を見直す時期に来ているのです。

 

もっと広い視野に立って、自分や世の中のことを考えてみる時期に来ているのかもしれません。

 

本当にあなたは自分がやりたいことをしていますか?

 

〈責任〉を果たすためには、いったん身を引く勇気を持ち、英断しましょう。

 

6、まとめ 

 

  • 医療現場では、以前から過酷な状況があった 
  • 責任感が強い医師ほど、自らの命を削るという悲しい結果になる 
  • 同僚が退職して、ますます逃げられなくなる 
  • 「ここまでを超えたら、辞める」というように、自分で区切りをつけておくことが大切になる 
  • 本当に死んでしまっては、〈責任〉を果たすことができない

 

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