みなさん、こんにちは。
釈尊の弟子の中には、実に、さまざまな人がいたようです。
今回はその中で、なんと大量殺人を行なっていた人が弟子になったという話をしていきたいと思います。
殺人鬼アングリマーラのことです。
Contents 目次
1、現代の宗教にも共通する問題
1、オウム真理教による「地下鉄サリン事件」
アングリマーラは、現在的にいうと、大量殺人事件の犯人です。
単なる殺人ではなく、宗教を背景にした、宗教テロリストと言えるかもしれません。
自分が教えを受けた師匠から、「人を殺せ!」と言われて多くの人を殺したのです。
これはオウム真理教の地下鉄サリン事件を思い出します。
犯人となった実行犯たちは、もともと非常にまじめな人だったそうです。
真面目に“修行”をしていく過程において、いつの間にか師匠である麻原彰晃から「人を殺せ!」と言われて、あのようなテロをおこなってしまったそうです。
2、人民寺院の「集団自殺」事件
さらには、もっと以前、アメリカ合衆国での人民寺院という宗教団体の集団自殺が思い出されますね。
教祖はジェームス・ウォーレン・"ジム"・ジョーンズ。
1978年11月18日にその教祖の指導によって、南米ガイアナのジョーンズタウンで決行された、909人がシアン中毒によって死亡した大事件です。
死んだ数百人のうち、子供たちが最初に死んだようです(殺された)。
彼らはシアン化物、鎮静剤、フルーツジュースを与えられ、注射器で喉にスプレーされたといいます。
うまく飲みこめない乳幼児には注射をしたようです。
抵抗したり、逃げようとした者は取り押さえられて無理矢理注射されるか、さもなければ射殺されたのです。
〈教祖のジェームス・ウォーレン・"ジム"・ジョーンズ〉
生存者の証言により、少なくとも300人が「殺害」されたことがわかっている。
事件後には、背中を撃たれた遺体も多数発見された、大変な事件です。
オウム真理教にしても人民寺院にしても、彼らに殺された人たちは本当にお気の毒です。
それと同時に、加害者となった人も、その教祖の“洗脳”の被害者ともいえるようです。
宗教というものは、こういう恐ろしい面もあるのです。
2、アングリマーラはどんな人だったか?
1、聡明で優秀なバラモン学生だった
まず、「アングリマーラ」という名前の意味は、指鬘ということで、指でつくった首飾りのことをいいます。
人を殺して、その切り取った指で首飾りを作るという、かなり猟奇的な事件を起こした連続殺人犯であり、テロリストとも言える人なのです。
アングリマーラは、本名をアヒンサカといいます。
彼は、サーヴァッティーにおけるバラモン大臣の子でした。
幼少時より聡明で、学生時代を専門の師匠の家で暮らして、ヴェーダなどの学問を学んだといいます。
多くの学生の中でも群を抜き、学ぶべきことはほとんど学び終わり、師匠の高弟になっていったといいます。
2、師匠の妻の誘惑を断る
おそらく、彼が20歳ごろのことです。
ある時、師匠のバラモンが、ある要件で外出をしていました。
兼ねてからこの青年の美貌と聡明さに心惹かれていた師匠の妻は、夫の不在中に、この青年を誘惑しようとしたのです。
「奥さま、いけません!」
もちろん、真面目なこの青年は、道ならぬこととして、師匠の魔の誘惑には従うことはありませんでした。
そうすると、これに恨みに思ったプライドの高い妻は、夫が帰ると、この青年に犯されたと偽りの申し立てをしたのです。
自分で服を引き裂いて、髪を振り乱して床の上に倒れたまま夫に嘘の報告をしたのです。
なんだか現代の不倫の話とよく似ていますね。
今から、二千数百年前のインドでも、人間の行ないというものは、現代人と同じなのですね。
師匠のバラモンは、これを真に受け、弟子のアヒンサカに対しての怒りがこみ上げてきたのです。
そして、この青年を懲罰しようと考えました。
しかし、体力的には打ち勝つ見込みはありません。
平凡な復讐よりも、苦しめるための、もっと効果的な方法をやってやろうと考えたのです。
3、殺人鬼アングリマーラの誕生
1、なぜ、アングリマーラは人を殺すことになったのか
師匠は、そこで、一計を案じて次のように言ったのです。
「すでにお前は、私から学ぶべき事は全て学び終わった。
だが、あと最後の仕上げが一つ残っている。
それは、早朝に城外の大道に出て、利剣を持って、通行人の首をはねるのだ。
一人から一本ずつの指を切り取り、100本の指で首飾りを作りなさい。
それができたならば、卒業となるであろう」
と。
2、アングリマーラの「無差別大量殺戮」が始まる
剣を受け取ったアヒンサカは、これを聞いて大いに驚き、苦しみ悩んだ。
しかし従順な彼は、師の命令を絶対と思い、師から受け取った剣をもって、その命にしたがうことにしたのです。
青年は、翌朝に大道に出て通行人を殺し、指を切って首飾りを作り始めたのです。
もともと若くて力があったので、あっという間に何十人も殺し、その指を切り取って首飾りを作り始めました。
人々は、このテロリストを「アングリマーラ(指鬘)」と呼び始めたのです。
その噂はただちにサーヴァッティーの全市に広がり、市民は恐れおののきました。
4、釈尊の導き
1、アングリマーラ、釈尊と出あう
これを聞いた釈尊は、市民と彼を救うべく、弟子たちの止めるのも聞かないで、一人でこの青年の方へと向かわれたのです。
沙門(しゃもん、出家して修行する人)が先方から来るのを見たアヒンサカ。
この青年はよき獲物とばかり待ち構えました。
青年は釈尊をやり過ごして、その後ろから襲うつもりでしたが、そこで釈尊は神通力を示されたのです。
青年が全速力で走っても、ゆっくりと歩いている釈尊に追いつくことができません。
2、釈尊の言葉によって、眼が開かれる
青年は思わず叫んだ。
「沙門よ、止まれ!」
釈尊は、
「自分は止まっているのだ。
アングリマーラよ、お前こそ止まれ」
と言いました。
青年は不思議に思い、
「何ゆえにおんみは、自分で歩いているのに止まっていると言い、私が止まっているのを止まっていないと言われるのか?」
と反問すると、
「自分は、一切の生類に対して害心を捨てているから止まっているのである。
君は、生類に対して自制心がないから、止まっていないのだ」
と。
釈尊のその言葉が、不思議な力を持って、青年の心を揺さぶった。
足を止めるのも、悪を止めるのも、同じ言葉です。
その言葉が、ピッタリと青年の心の琴線に触れたのです。
これを聞いた聡明な青年は、瞬時にして自らの罪深さに気づいた。
心の眼を開き、釈尊の後について祇園精舎に行き、その弟子になったのでした。
釈尊が35才での成道後21年目、56才の時のことだといいます。
3、アングリマーラの救い
国王パセーナディーは、凶賊のことを聞き、大軍を率いて討伐に出ていたが、戝はすでに出家して釈尊の弟子になっていると聞いた。
戝を捕まえにきた王に、釈尊は次のようにいました。
「王よ、もしその殺人鬼が私のもとで修行をし、悟りを開いていたとすれば、どうしますか?」
と。
それに対して王は、
「捉える代わりに供養しましょう。
でも、そんな事はあり得ませんがね」
と言いました。
すると釈尊は、瞑想している一人の僧を指差した。
かつての殺人鬼でした。
王は、その崇高な姿に心を打たれ、思わずその僧に手を合わせました。
4、アングリマーラへの迫害
しかしながら、市中の人々はそうはいきません。
青年が法衣を着けてサーヴァッティーの町を托鉢に歩いていると、民衆は殺人事件を覚えていて、彼に石やを投げつけたのです。
そのために衣は破れ、彼は血まみれになり傷つきました。
痛みに耐えて祇園精舎に帰ると、釈尊は、深い罪業を早く清算するために、すべてを忍受すべきことを説きました。
しかし、やがて人々は石を投げることがなくなり、彼が罪を悔いて懺悔し、仏弟子となって戒を守る清らかな姿に、手を合わせるようになったといいます。
今回は、大量殺人を犯したアングリマーラが釈尊によって救われたお話でした。
このように釈尊の真の教えは、どんな極悪人でも救われる教えなのです。
5、おわりに
私は以前に〈子どものいじめ事件〉についての記事を書きました。
現代は、いつ自分の子どもが被害者になるかもしれない時代です。
しかし、それと同時に、自分の子どもが加害者になって犯罪を犯してしまうかもわからないのです。
子どもだけではなく大人であっても同様ですね。
被害者にも加害者にもなってしまう可能性は誰にでもあります。
オウム真理教事件の加害者も、このアングリマーラのように、はじめは純粋に道を求めて“出家”をしたのかもしれません。
それが、いつしか大量殺人事件を犯してしまう。
まさにこれは、仏教でいう悪業(カルマ)のなせるわざでしょう。
アングリマーラは、そのような深いカルマでも、真の釈尊の教えでは救われるという、良いお手本と言えるでしょう。
【参考記事】子どものいじめ事件についての記事です。⬇︎
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