みなさんは、『運命』って、あると思いますか?
今回は、運命についてのお話です。
Contents 目次
1、運命の星に苦しむ女性
1、ある女性の嘆き
『わたしって、なんでこんな運命の星に生まれたんや!』
これは、ある高齢の女性が、ある朝、私に泣きながら話された言葉です。
この方は、若い頃に発症した統合失調症で入退院を繰り返して、長年、苦しんこられた方です。
いつもは比較的に陽気な方なのです。
その方が、ある朝突然に、このような言葉で泣いて話されたのですね。
この女性が、“運命の星”という言葉を使ったのは、以前に占いとか運命学とかで、誰かに言われたからでしょうか?
あるいは、そうかもしれません。
でも、そうではなく、自分自身のこれまでの不運続きの人生を振り返ってみて、自然と“運命の星”という言葉が出てきたのかもしれませんね。
このように私たちは、自分の人生(あるいは、非常に親しい人の人生)を振り返ってみた時に、“運命”とか“運命の星”と表現したくなるような出来事が、頭に蘇るのではないでしょうか。
そこには切実な想いがあるわけですね。
運命というものを、深く考えた事がなくても、“運命”というものを想定したくなる人は多いでしょう。
〈運命の星〉は、実際にいろいろとあるのですが、今回は、なぜそれがあるのか、を考えてみたいと思います。
(人はどのような〈運命の星〉を持つかは、私の以前の記事をご覧ください。⬇︎)
【参考記事】人が持つ〈運命の星〉解説!
2、運命を形成するものは何か?
では、人の運命を形成するものは、果たして何なのでしょうか?
何の理由もなく、運命がかたち作られるとは考えられないでしょう。
ある人が、生まれた時にはすでに、ある特定の不幸な(あるいは、幸福な)運命の星の元に決定されているとします。
すると、そうした運命を形作ったものは、いったい何なのか、という事です。
それは偶然だ、という人もいるでしょう。
でも、単なる“偶然だ”と、あっさりと片付けてしまって納得出来る人は、これまでに比較的に幸運な人生を生きてこられた人でしょう。
今までいく度も、苦しい出来事に遭ってきた人からすれば、その運命をそう簡単に“偶然だ”と言って割り切れるものではないはずです。
「なぜ自分は、こんなに不運なんだ?」
そう思わざるをえないとき、ってあるものです。
やはり、そうした運命になってしまったのには、何かの理由(わけ)があるのですね。
2、ソンディの運命心理学
1、ソンディ博士自身が、不気味で不思議な体験をする
じつは〈良い運命〉にも、〈悪い運命〉にも、ちゃんと《原因》があるのです。
さて、みなさんは、リポット・ソンディ(Lipot.Szondi 1893-1986)というハンガリーの精神科医・心理学者の名前を聞いたことがあるでしょうか?
彼は、人の運命を、先祖の抑圧意識によって決定される、としました。
つまり、先祖の生き様(死に様)が私たちの人生の運命を形作っている、というのです。
いや、先祖が歩んだ運命を、そのままそっくりに自分が繰り返しているのです。
リポット・ソンディ博士
そうした理論は、ソンディ博士自身の強烈な体験から出ているのです。
その現象を、次に深層心理学(ソンディ心理学)の方から見ていきましょう。
2、大失敗に終わった、異母兄の結婚(恋愛)
ソンディ博士は、ドストエフスキーなどの分析で、非常に意味深い洞察をしています。
若きソンディ青年が運命心理学の理論を作り上げるにあたっては、他の人の分析だけではなく、ソンディ自身、その身に起きた強烈な〈体験〉があるのですね。
それが、独自の〈運命心理学〉への目覚めとなっているのです。
それを見てみましょう。
ここでは、『君は誰の輪廻転生(うまれかわり)か』(桐山靖雄著)が非常にわかりやすく書かれていますので、それを引用していきます。
『1916年、第一次世界大戦の最中であった。
ウイーン大学で、当時著名な心理学者であったワグナー・ジャレッグ教授の講義を、毎日、熱心に聴講している一人の若い軍医中尉がいた。
かれ(ソンディ)は、連隊の野戦病院から、傷病者をウィーンの病院に護送してきたのであったが、このチャンスを生かして、わずかな休暇を、かねてから一度謦咳(けいがい)に接したいと願っていたジャレッグ教授の教室にかよっていたのである。
若い中尉は・・・かれはまだ23才であった・・・なんとか休暇をもう少しのばしたいものだと苦心していた。
教授の講義をもう少し聴きたい気持ちももちろんであったが、それだけではなく、かれはこのウィーンに来てすぐ、初恋となる女性に巡り合ったのだった。
彼女は、情熱的なブロンドで、美しかった。
語学教師をしており、ザクセンとアーリアンの出身であった。
若い二人はすっかり夢中になって、中尉は、彼女をぜひ結婚したいと思ったのだった。
そのために、なんとかもう少し休暇をのばしたいと思ったのである。
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そんなある夜、かれは奇妙な夢を見た。
かれの両親が、かれの異母兄の悲惨な運命について、悲しげに語り合っている夢であった。
その異母兄というのは、今から30年ほど前に、かれとおなじように、このウィーン大学で勉強していたのだった。
ところが、これもかれとおなじように、ブロンドの髪のアーリアンとザクセンの出身である語学教師の女性を愛してしまったのである。
ふしぎなことに、いま、かれが心から結婚したいと願っている女性となにもかもおなじであった。
出身がザクセン・アーリアンであり、情熱的なブロンドであり、なんと語学教師という職業までおなじだったのだ。
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かれの異母兄はその女性と結婚し、そのため、結局、医師国家試験の受験を断念しなければならないことになってしまった。
そしてかれの結婚は完全に失敗であった。
悲惨といってもよかった。
これらのことは中尉(ソンディ)の生まれる前に起きたことで、くわしいことは知らなかった。
幼少の頃に耳にしたまま、もうほとんど思い出しもしないような出来事だった。
どうしてこんな夢を見たんだろうか?』
異母兄の運命をそのままそっくりに反復しようとしていたソンディ。
これを単なる、偶然の一致と言って片付けてしまって良いものでしょうか?
3、危うく異母兄の〈不幸な運命〉を反復しそうになる!
異母兄の不幸な結婚の結末を知ったソンディ。
続きを見てみましょう。
『明けがた目を覚ました中尉は、妙に生ま生ましいこの夢を思い返しているうちに、電気に打たれたように愕然となった。
なんという暗号!
しかしかれは直感した。
これは偶然の暗号ではない!
かれは無意識のうちにこの異母兄の運命を反復しようとしているのだ!
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だが、なぜ?かれは必死に考えた。
かれは精神科の医師であった。
心理学を学び、「無意識の意識」のはたらきをよく知っていた。
これこそ、その無意識の意識のはたらきにちがいない。
・・・かれはこの運命の反復を恐れた。
どういうところからこの運命の反復がはじまったのかわからなかったが、この流れに乗ってはいけないことだけは、直感的に感じた。
かれはつよい意思と理性をはたらかせて、この無意識に意識の強制と戦った。
断ちがたい愛着をたち切り、ただちにウィーンを去ることに決意した。』
こうした強烈な体験によって、ソンディは先祖の運命の反復という現象を考えたのですね。
この異母兄は、悲惨な結婚生活ののちに、自殺し、相手の女性も、その数年後に、自殺にひとしい惨めな死に方をしたといいます。
ソンディは、この異母兄の死の三年のちに生まれています。
3、『運命』は、どこからつくられるのだろうか?
1、〈運命心理学〉のソンディー理論とは?
リポット・ソンディ博士の理論というものは、次のようなものです。
「個人の深層意識のなかに抑圧されているある特定の祖先の欲求が、その個人の恋愛・友情・職業・疾病および死亡における無意識的選択行動となって、その個人の運命を決定する。」
つまり、自分の運命が、先祖の中の特定の人の抑圧意識によって、自分の知らないうちに決定されていくということです。
私たちは、通常は、自分の意思で、恋愛(結婚)の相手、友だち、仕事を選んでいるでしょ⁉︎
これらはすべて人生の運命を大きく左右する要素ですね。
しかし、ソンディによれば、そうした人生に関わる重大な要素を、(自分の意思で選んではいるのですが)それ自体が先祖の抑圧意識によって、選ばれている、ということなのです。
それどころか疾病(病気)ですら、選んでしまっているというのです。
だれしも好き好んで、こういう病気になりたい、なんて思わないでしょう。
しかし、疾病ですら、先祖の抑圧意識による、というのですから、怖いですね。
2、特定の先祖がたどった運命を、そのまま自分が繰り返してしまう!
先ほど、「運命が、自分の知らないうちに決定されていく」といいました。
が、当の本人にとっては、もっともな理由(わけ)があって、行動を起こしているのです。
しかしその結果、結局は先祖の抑圧意識の通りの人生を歩んでいる、ということのです。
つまり、特定の先祖の不幸な人生を、そのまま反復して自らが同じ人生を歩んでしまうのです。
さらにソンディは、職業選択に関しても、人は無意識的な衝動で、特定の職を選ぶといいます。
この事について、『増補 運命心理学入門』(佐竹隆三著)より引用してみます。
このような職業選択様式の範例として、同じ家族の中で一人は放火犯となり他の一人は消防夫となっていう事例が、ソンディによって述べられている。あるいはまた、家族に一人が犯罪者となり、これとは反対に、他の一人が刑務所看守となっている例もある。
(中略)
エレンベルガーは、その一人が顕著な犯罪者であり、他の一人が優秀な刑務所看守であるという一卵性双生児について報告しているからである。
つまり、先祖の運命による無意識の意識が、子孫にそれと同じか、あるいは、まったく正反対の職業となって現れるというのです。
3、なぜ自分は、こんな生き方なのだろうか⁉︎
自分の意思で選んでいるとしても、その「自分の意思」自体が、無意識の世界では、先祖からの衝動を受け継いでいるようなのです。
これは職業だけではありません。
このような衝動的な要求の中に、恋愛・友情・職業・疾患および死における選択にさいしての「先祖の強制」が存在するのである。(『増補 運命心理学入門』)
つまり、友達や恋愛(結婚)の相手で、誰を選ぶのか、も同じです。
そうした人生において、自分の人生(運命)を大きく左右する出会いや疾患(病気)、死亡形態ですら、「先祖の強制」がある、というのですね。
こうしてみていきますと、『運命』というものは、実際にあるのだと思えますね。
みなさんは周りの人を見て、
「あの人は、それほど綺麗でもないし、才能もなさそうなのに、幸せそうだなぁ」
「お金持ちになれる人は、生まれながら運が強いんじゃないだろうか?」
「それに比べて、自分はなぜいつもうまくいかにのだろう?」
「自分は、人よりも頭は良いはずのに、なぜいつまでも貧乏なんだろう?」
こんなことを考えたことはないでしょうか?
実はそこには、先祖の抑圧意識による、〈運命の星〉が大きく作用しているのですね。
今日は、『運命』をつくりあげる原因について、運命心理学を取り上げて考えてみました。
4、まとめ
- 人はしばしば、自分の人生を振り返ってみた時に、“運命”とか“運命の星”と表現したくなるような出来事が、頭に蘇る
- リポット・ソンディはは、人の運命を、先祖の抑圧意識によって決定される、とした
- ソンディ自身、その身に起きた強烈な〈体験〉があ理、その独自の理論を完成させた
- ソンディによれば、人生に関わる重大な要素を、(自分の意思で選んではいるのですが)それ自体が先祖の抑圧意識によって、選ばれている、という