今回はピタゴラスのお話です。
ピタゴラスと言えば、数学の「ピタゴラスの定理」なら、多くの人がご存じでしょう。
これは「三平方の定理」とも呼ばれているものです。
そのピタゴラスは、実は、人の輪廻転生を説いて、「ピタゴラス教団」という宗教的教団を作ったのです。
今回は、ピタゴラスが輪廻転生をどう説いていたのかをみていきたい思います。
Contents 目次
1、ピタゴラスって、どんな人なのか?
ピタゴラスと言えば、中学生の時に習う「三平方の定理」に見られるように、昔の「偉大な数学者」という風に教えられた人が多いと思いますね。
「偉大な数学者」というのは、確かに正しいのですが、それだけでは、その偉大な数学を生み出した背景がわかりませんよね。
ピタゴラスは、紀元前582年頃、哲学の第一の発祥の地、小アジア西海岸近くのサモス島に生まれました(紀元前582年頃ー紀元前496年頃)。
その豊かな学識とつよい宗教的・人格的感化をもって、「ピタゴラス教団」を起こして、多くの弟子を指導したのです。
教団には600名もの弟子がいたといいます。
彼は特に「数の原理」に興味を持ち、「万物を生み出したもとは、数である」として、数学的研究に打ち込んだのです。
「ピタゴラス教団」は、宗教的教団なのですが、世界最古の数学研究センターだったともいえるのです。
また、「哲学」という言葉を使った最初の人であるとも言われています。
つまり、ピタゴラスは哲学の創始者の一人ともいえるのですね。
ちなみにソクラテスは、紀元前470年頃の生まれですから、ピタゴラスはソクラテスの生まれる約20数年前には亡くなっています。
さらに、インドに目を転じて、仏教を始めた釈尊(ブッダ、釈迦)の生没年は、紀元前463年 - 紀元前383年(中村元説)となっていますので、ソクラテスとほぼ同じ。
孔子が紀元前552年 - 紀元前479年なので、ピタゴラスは、孔子と年代的にはほぼ重なってきます。
では、ピタゴラスは霊魂とか輪廻転生を、どのように考えていたのでしょうか。
2、ピタゴラス派の霊魂不滅説
ピタゴラス派の人びとは、霊魂の不滅と〈輪廻転生〉を信じていたといいます。
そして、魂の浄化をねがって、厳格な戒律のもとに禁欲生活をいとなんでいました。
かれらの霊魂に対する考えは、およそ次のようになります。
人間の霊魂は、前世において自らの犯した罪のために、現世にあっても肉体の牢獄に閉じ込められている。
そこから解放されて浄福を得るためには、霊魂の浄化が必要である。
霊魂が純粋になると、肉体の桎梏(束縛)から抜け出ることが出来る。
そして最高の場所である天上界へいたることできるのだ。
しかし、不浄であると魂は拘束されて、下級の人間や動物の肉体のうちに宿ることになって、安らうことがない。
では、魂が浄化されて純粋になるためにはどうすればよいのだろうか。
そのためには、魂を善に導くことが重要であると考える。
〈ピタゴラス(紀元前582年頃ー紀元前496年頃)〉
これだけをみると、なんとなく、インドのバラモン教や仏教に共通するところもありますね。
3、数の原理
ピタゴラス派の特異なところは、「数の哲学」です。
素数の発見、奇数・偶数の区別、正多面体の作図をはじめ、初等幾何学の定理のほとんどは、ピタゴラス教団で発見されました。
それまでの数学と言えば、古代エジプトやバビロニアの数学でした。
これらは、実用的な測地術であって、数学というよりも、算術と言ったほうがよいでしょう。
ピタゴラスの教団が初めて、算術のような測地術を、数学と幾何学にまで高めたのですね。
では、なぜピタゴラス教団は、数学の研究をしたのでしょうか?
もともと輪廻転生を信じて、霊魂の不死を認め、霊魂を浄化する必要を説いていたわけです。
「数学」は霊魂を浄化するための、いわば修行の方法として研究したのです。
万物が生成変化消滅するのにたいして、数は恒常不変のものです。
なので万物のもっとも基本となる元のものarche(アルケー)を、「数」であると考えたのです。
4、音楽や天体の研究も行われた
また、ピタゴラス派の人びとは、音楽についても数学的研究をすすめました。
音の高低が弦の長さに数的に比例することを知っていたといわれ、音楽にも異常なほどの興味を示したのです。
さらに、最初の地動説の考え方も生まれました。
彼らは、天文学者でもあったのです。
天体の運行は数学的法則にしたがって行われる。
そして宇宙の天球はある秩序にしたがって一つの共通の中心をめぐっている。
それは数的にきまった間隔をおいて運動し、その調和から、微妙な「天界の音楽」が奏されているという。
その音楽は、ふつうの人にはきこえない。
しかし、ピタゴラスには聞くことが出来たといいます。
5、哲学者・ピタゴラス
ちなみに、ピタゴラスは自身では何も著作をのこしていません。
これは世界の四大聖人と呼ばれる、釈尊、イエス・キリスト、孔子、ソクラテスが自分で書いた著作物がないのと同じですね。
ですから、ピタゴラス派の思想が、どこまでピタゴラス自身のものだったか、あるいは弟子たちのものであるかは区別することが出来ないようです。
「三平方の定理」もピタゴラス本人が考え出したものかどうかは不明だそうです。
さて、このように霊魂の不滅と輪廻転生を信じていたピタゴラス。
万物のもっとも基本となるもの、アルケーを「神」とはしなかったところが、宗教者と言われない理由です。
「神」なるものがいないから、拝む対象がなく、「本尊」もない。
だから、ピタゴラスとその弟子たちは、宗教的ではあるけれども、哲学者の集団だったのです。
霊魂と輪廻転生を信じ、宗教的関心が強く禁欲生活をおくるにも関わらず、ピタゴラスが宗教家と言われないのはそのためです。
このピタゴラス派のアルケーに関する思想は、それ以後の哲学に大きな影響を与えることになります。
この地上の世界の他に何かがあるという思想は、プラトンのイデアの思想に受け継がれ、キリスト教に影響を及ぼすのです。
今回は、意外と知られていない、〈輪廻転生〉を信じていたピタゴラスについてみてきました。
6、まとめ
- ピタゴラスは、霊魂の不滅や輪廻転生を説いて、「ピタゴラス教団」という宗教的教団を作った
- ピタゴラス派の人びとは、魂の浄化をねがって、厳格な戒律のもとに禁欲生活をいとなんでいた
- 数学は、霊魂を浄化するための、いわば修行の方法として、数学を研究した
- 万物のもっとも基本となるもの、アルケーを「神」とはしなかったところが、宗教者と言われない理由である
- ピタゴラス派のアルケーに関する思想は、それ以後の哲学史に大きな影響を与えた
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