カルチャー 仏教 輪廻転生・生まれ変わり

来世、「動物」に生まれ変わるのか?・・・人間に生まれ変われるのか⁈(輪廻転生の話)

みなさん、動物が好きな人は多いのではないでしょうか。

ペットとして飼ったら、心が癒されますし、動物園などに遊びに行くと楽しいですよね。

 

でも、来世に自分が動物に生まれ変わりたいか、と聞かれるとどうでしょう。

 

今回は、動物に生まれ変わってしまうとどうなるか、ということについてのお話です。

 

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Contents 目次

1、動物としての一生

 

1、いったん動物として生まれてしまうと、次はどうなるか⁉︎

 

みなさんにも好きな動物や、かわいいと思う動物はいっぱいいるでしょう。

好きなペットを飼っていると、それだけでも幸福感が高まりますね。

 

でも、自分が次の一生において、その動物に生まれたいかとなると、話は別になりますよね。

 

ひとたび動物に生まれ変わってしまうと、その動物の習性とか本能が身についてしまいます。

 

すると、さらに次の生まれ変わりにも同種類の動物か、場合によってはそれ以下の動物に生まれ変わってしまう可能性があります。

 

 

現在が人間であって、来世が動物になってしまった場合、次のようなことが考えられると思います。

 

  1. 人間であったころの習性や本能が、動物に生まれ変わった後も、若干は残っている
  2. そのため、飼い主や人の気持ちが、よくわかる
  3. けれども、脳は動物の脳になってしまっているので、ちゃんと言語を理解することはできない
  4. 飼い主がいない場合には、〈野生生活〉には慣れていないので、野生に慣れるのに時間がかかるかもしれない

 

これは、前世が人間であった場合です。

 

なんとなく、中島敦の小説「山月記」を思い出しますね。

これはエリートの主人公・李徴が虎になってしまい、しだいに人間の心を失い、虎になっていく話です。

 


山月記・李陵 中島敦 名作選 (角川つばさ文庫)

 

では、二回目の生まれ変わり(つまり、動物から動物への生まれ変わり)の場合は、どうでしょうか?

人間としての習性や本能はもう完全に失われて、〈本物の〉動物としての一生を生きることになります。

 

あとは、人間に比べると短い一生を何度も繰り返し生まれ変わることになります。

そして、もう二度と、人間には生まれ変わることが出来ない、ということになります。

 

このように考えてみると、誰しもやっぱり次も人間に生まれ変わりたいと思うのではないでしょうか。

 

2、やっぱり人間に生まれ変わりたい

 

上に見てきましたように、いったん動物に生まれ変わってしますと、あとはもう二度と人間に戻れない可能性が高くなります。

 

「動物は可愛いし、人間のような苦労をしなくてもよいから、次は動物に生まれ変わりたい」

って考えていませんでしたか?

 

今、苦しい環境にある人は、ペットなどを見て、ふと「動物に生まれ変わりたい」と思うこともあるやもしれませんね。

 

 

たしかに、動物に生まれてしまうと、人間のような複雑な社会の仕組みで苦労することはないでしょう。

人間関係で苦労することもなくなります。

でも、本当に動物の方が良いのでしょうか?

 

あの有名な「千と千尋の神隠し」は、ご覧になられたでしょうか?

食べ物を貪り食う千尋の両親が豚になってしまうのです。

 

この物語で描写されていたように、卑しい心を持った人は、あの世(死後の世界?)では、誘惑に負けて人間以外の動物になってしまうかもしれませんね。

 

 

でも、動物に生まれ変わったならば、動物にはその動物なりの他の動物との競争があります。

 

それは生死がかかった生存競争です。

人間関係の苦労とは比べ物にならない厳しい環境といえるでしょうね。

その競争に負ければ、食べられて、終わってしまうからです。

 

ですから、やはり、人間に生まれてくるということは、素晴らしいことなのです。

 

「千と千尋の神隠し」の作者がどういう意味でその内容を描いていたのかはわかりません。

でも、こうした描写があるところは、人間の本質をズバリと描いた素晴らしい名作だと思いますね。

 


千と千尋の神隠し [DVD]

2、釈迦が説く生まれ変わり

〈生まれ変わり〉というものを考えるのに、ここでは「仏教」ではそれを、どう説かれているかを見てみたいと思います。

 

1、ブッダ釈尊(釈迦)が説く、人の生まれ変わりとは

 

はたして、人間が動物に生まれ変わるってことはあるのでしょうか⁈

 

まず、ブッダ釈尊(釈迦)ご自身が、それを語った部分を見てみましょう。

 

ここでは、『雑阿含経(ぞうあごんぎょう)・母乳経』の現代語訳をみてみましょう。

 

このように私は聞きました。

仏さま(仏陀釈尊・釈迦)がコーサラ国の祇園精舎(ぎおんしょうじゃ、祇樹給孤独園)にご滞在の時のことです。

仏さま(釈迦)は弟子たちに告げられました。

「衆生は始まりのない昔から生死を繰り返し、無明におおわれて、愛(愛結)にその首は繋がれ、果てしもなく長い間、輪廻転生を繰り返し続けるだけで苦しみの根本を知らないのです」

(中略)

仏さまは弟子に告げられました。

「よし、よし、その通りです。

おまえたちが輪廻転生を繰り返す間に飲んだ母乳は、恒河(ガンジス川)と四大海の水量よりも多いのです。

なぜならば、おまえたちは輪廻転生中に、ある時はゾウとして生まれ、その時飲んだ母乳は極めて多量です。

また、時にはラクダ・ウマ・ウシ・ロバや種々の禽獣として生まれ、その時飲んだ母乳の量も極めて多量です」

 

人間は(動物なども含めて)それだけ無限の輪廻転生を繰り返してきている、と釈迦は説いているわけです。

 

時にはラクダ・ウマ・ウシ・ロバや種々の禽獣として生まれ、その時飲んだ母乳の量も極めて多量です

 

と、わかりやすい話で説明されています。

 

 

続きをみてみましょう。

 

「また、おまえたちは、輪廻転生の間に、時には墓場に棄てられて膿や血が多量に流出し、またある時には地獄・餓鬼・畜生の三悪趣に堕ち、髄血が流出することも同様に多量です。

弟子たちよ、おまえたちははじまりのない昔から生死を繰り返していますが、苦の根本原因を知りません。

弟子たちよ、物質的現象は永遠に変わらず存在し続け得るものでしょうか。

あるいは変化するものでしょうか」

弟子たちは仏さまに申しました。

「世尊よ、永遠に変わらず存在し続けるものではありません」

 

と、このように、釈迦とその弟子達との会話(問答)が行われています。

 

なんと、

膿や血が多量に流出して、またある時には地獄・餓鬼・畜生の三悪趣に堕ち、髄血が流出することも同様に多量にあるぞ!

と表現されています。

 

2、釈迦自身が、ありありと人の前世を見て、〈生まれ変わり〉を説いた 

 

この中で、ブッダ釈尊(釈迦)は、非常にわかりやすく、人の生まれ変わり(輪廻転生)を説明をされていますね。

 

人間は(動物なども含めて)、

それだけ無限の輪廻転生を繰り返してきている

と釈迦は説いているわけです。

 

ここでは、ブッダ釈尊は、自分自身でその超人的な透視能力によって、あらゆる生命の生まれ変わりの姿をみたのでした。

ひとの人間以外の動物であった時のことも観て、その時に飲んだ母乳の量のお話をされているのです。

 

人は輪廻転生(生まれ変わり)をこれまでにずっと続けてきた、とブッダ釈尊(釈迦)はいいます。

それは無限に長い時間を何度も何度も繰り返し、生まれ変わりをしてきている、というのです。

 

 

しかも、人間ばかりの生まれ変わりではありません。

かつて動物などの他の生物であった時もあった、ということです。

 

しかもなんと、これまでに飲んだ母乳の総量が、ガンジス川と世界の大会の水の総量よりも多いというのです。

 

これほどわかりやすい説明はないのではないのではないのでしょうか⁉︎

 

【関連記事】ブッダの説く「輪廻転生」については、前の私の記事をご参照ください。⬇︎

5分間で、人生観が変わる!・・・生まれ変わり(輪廻転生)の秘密〈ブッダ釈尊編〉

3、来世に運よく〈人間〉に生まれ変わっても残る、問題。

では次に、死後にはどのようなことが待ち受けているのでしょうか?

 

1、死後の世界の「怖さ」を見てみよう

 

ここでは、死後の世界を記した有名な『チベットの死者の書』を参考にしてみたいと思います。

 

『死者の書』では、人間が死ぬと、三日半ののちに、意識を取りもどす、といいます。

 

ここで「意識を取り戻す」というのは、どこまでも死んでからの意識であって、生き返るという意味ではありません。

肉体が死滅しても、そのあとに“意識”だけが蘇るというのです。


原典訳 チベットの死者の書 (ちくま学芸文庫)

 

この時期には、自分の身に起こったことの自覚ができないため、自分が死んでいるのか、死んでいないのかの自覚がない、と『死者の書』はいいます。

この状態を〈チカエ・バルドゥ(中有)〉といいます。

 

その後しだいに、周囲をはっきりと自覚できるようになっていく。それと同時に、自分が死んだことを自覚するのです。

 

『死者の書』はいいます。

 

この時に汝は次のように考えるであろう。

ああ、私は死んでしまっているのだ。私はどうしたらよいのであろう》

と、このように悲しく思っている時に心臓は冷たく、うつろになる。

計り知れないほど激しい苦悩に襲われる。

一つの場所に落ち着くことができずに、歩きつづけなければならない。

このような時にはいろいろなことを思ってはならない。

意識を正常に保つべきである。

お供えされたもの以外には食物も満足に食べる事ができないような時期が、汝に訪れるであろう。

 

と。

このように、「解脱(げだつ)」できない人の死後の苦しみが説かれています。

 

自分が死んでしまっていることに気づき、激しい衝撃に見舞われるのです。

さらに生前における行いが〈カルマン(業)〉となって、死後の世界へ大きな影響を与えることについても説かれています。

 

このように、『死者の書』では、何物にも執着せず、求めない心の状態で過ごすことが、解脱への道であると説かれてるのです。

生きていた時の自分の持ち物に執着しても、それを得ることができなだけでなく、解脱できず苦しむといいます。

 

2、死者は苦しみのあまり、何としても身体を持ちたいと思う 

 

『君は誰の輪廻転生か』(桐山靖雄著・平川出版社)によると、生前に重い業(カルマ)を積んできたものにとっては、死んでからの環境は、あまりにも苦しい状態だそうです。

 

そこで、

死者は苦しみのあまり、「なんとしてでも身体を持ちたい」

と思い、再生するといいます。

 

その結果、悲惨な境遇に堕ちる「業」を持った死者は、とてつもない悪い身体環境を持って再生するようです。

 

ここで動物に生まれ変わってしまう場合があるようです。

こうして、生きていた時になした悪業の重い者は、苦しみの世界から抜け出ることができません。

 


君は誰れの輪廻転生(うまれかわり)か

しかし、悪業から解脱(げだつ)している者は苦しみの空間を越えることが出来るそうです。

 

「自業自得」というもので、自身がなした行為の善悪の結果が、[前世➡︎今世➡︎来世]へと繋がっていくそうです。

 

再び「運よく」人間に生まれ変わったとしても、生まれつき過酷な状況や環境のもとで生まれる恐れがあるのです。

 

それは、生まれつき心身に重大な障害を持って生まれるかもしれません。

身体は健康でも、戦争状態の飢餓地帯に生まれてしまうかもしれません。

あるいは、日本のような比較的安全で豊かな国に生まれたとしても、そのとりまく家庭や社会環境などによって、貧困に陥り、犯罪にどっぷりとつかった人生を送らなけらばならなくなるやもしれません。

 

 

こうしたすべての悪業から解脱し、こころが空(くう)になったもののみ、苦しみの境涯から抜けることが出来るということです。

 

そうした、業(カルマ)から、いかにして解脱するか、ブッダ釈尊(釈迦)が生涯かかってそれを教えたのです。

 

それが、

ブッダ釈尊の言説を残した唯一のお経である「阿含経(あごんぎょう)」に、「成仏法」としてのこされている

ということです。

 

これについては、また別のページで詳しく書いていますのでご参照ください。

 

今回は、人が必ずしも来世も人間に生まれ変わるのではないことをお話ししてきました。

今後も別の角度から、輪廻転生(生まれかわり)について、書いていきたいと思っています。

 

4、まとめ

  • ひとたび動物に生まれ変わってしまうと、その動物の習性とか本能が身についてしまい、再び人間に生まれ変わることができにくくなる 
  • 動物の競争社会は生死をかけたもので、人間関係の過酷さとは比べ物にならない厳しい環境だ 
  • ブッダ釈尊は、無限の生涯をみて、業が深い者は動物に生まれ変わることも説いている 
  • 生前における行いが〈カルマン(業)〉となって、死後の世界へ大きな影響を与える  
  • 死者は苦しみのあまり、何としてでも身体を持ちたいと思い、再生する 
  • 再び“運よく”人間に生まれ変わったとしても、非常に過酷な状況や環境のもとで生まれる恐れがある

 

【参考文献】 『君は誰の輪廻転生か』(桐山靖雄著・平川出版社) 

       『チベットの死者の書』(川崎信定訳・ちくま学芸文庫)

       『釈尊の生涯』(水野弘元著・春秋社)

 

 

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【関連記事】死後の世界の状況については、以前の私の記事をご参照ください。⬇︎

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