みなさんの身近なところに、最近になって、急激に不運が続いて苦しい状態になっている人はいませんか?
- 医者に診てもらっても原因がわからない病気にかかっている
- あれほど仲が良かった家庭が、なぜか突然に崩壊の危機に
- 精神疾患ではないのに、おかしな言動を衝動的にしてしまうようになった
これまでの私のページでは、おもに仏教の見方での、こうした問題の解決方法をみてきました。
今回は、そのような原因不明の事態に見舞われたときの解決の一つの選択肢として、シャーマンとよばれる、特殊な霊的能力を持った人をあげてみました。
〈ユタ〉や〈イタコ〉、〈ゴミソ〉のように、比較的によく知られたシャーマンは、すぐそこにいる場合もあるやもしれませんね。
今回は、それらシャーマンの中でも〈琉球(沖縄)ユタ〉についてのお話をしてみようと思います。
Contents 目次
1、琉球ユタの世界
1、沖縄の巫病、「カミダーリィ」
沖縄では、相手がユタとわかると、ユタが若くても年齢に関係なく本気で相談してくるようです。
また、沖縄県では、ユタと呼ばれる霊能者は、その予備軍も入れて三千人から一万人もいるといわれています。
沖縄の約九十%の家庭には、かかりつけの主治医のような形で、「かかりつけのユタ」がいて、冠婚葬祭から人生相談、病気などの相談ものるのです。
では、そもそも、〈ユタ〉と呼ばれる人は、どういう人なのでしょうか?
琉球(沖縄)のユタになる人は、必ずその前兆として「カミダーリィ(神ダーリィ)」という現象に見舞われるそうです。
それは、およそ次のような“症状(?)”となって現れます。
平穏な日々を送っていた人間が、不意に幻視や幻覚にみまわれます。
夢では、神霊や祖霊のような人物が現れ、「ユタになれ」と勧め出すそうです。
当の本人は、はじめはそれを拒むのだが、奇妙な幻覚や夢は治らない。
やがて、その人間は、病人のようにやつれてしまい、錯乱したように辺りを彷徨するようになるのです。
こうした症状は、「巫病(ふびょう)」と呼ばれます。
琉球のユタに限らず、召命型のシャーマンの多くは、このような症状を経験しているようです。
巫病にかかった人は、なかば神に追われるようにして、シャーマンへの道を進んでいくそうです。
2、ユタになる素質
カミダーリィが起きる人には、何らかの前兆があることが多いようです。
たとえば、幼い頃から霊能に優れていたとかです。
あるいは、先祖に、すごい霊能者がいたとかです。
こうした生まれつき霊的な感性に鋭くてユタになる素質を持っている人を、沖縄では「サーダカンマリ(性高い生まれ)」と呼ぶそうです。
さらに、カミダーリィにかかった人に、難病や家庭の不和、経済的貧困といった深刻な事情を抱える人も少なくないようです。
これは、琉球ユタのカミダーリィに限らず、世界中のシャーマンや霊能者と呼ばれる人が、しばしば体験しているものです。
いわゆる「シャーマンの受難」というものです。
大本の教祖・出口ナオが、家庭の不幸と貧困が極まったときに神憑り(かみがかり)して、「艮(うしとら)の金神の世になりたぞよ・・・」と神のお告げを始めたのも、それに当たるでしょう。
3、巫病が治る時
巫病にかかっても、それは必ずしも一時的なものであるとは限りません。
数ヶ月で終わるものもあれば、断続的に何年も続く場合もあるようです。
また、いったん治った後、10年も経ってから再発する人もいるようです。
そして、ユタとなることを決意して、巫業を習得し始めると、症状が忽然と消えて、心身が癒されるのです。
4、ユタの修行階梯
ユタの場合は、明確な学習過程が特に定められているわけではないようです。
この点で、厳然とした修行の段階があるとされる東北地方のイタコとは違うところです。
カミダーリィにかかって入巫を志した人は、大抵は近隣の先輩ユタの元を訪れて、そこで「ハンジ」と呼ばれる占いをしてもらうことになります。
「ハンジ」によって、このカミダーリィが本当に「ユタとなれ」と言う神からの知らせなのかどうか、最終的な判断がされるのです。
そしてこれに合格すると、修行の手ほどきを受けることになります。
しかし、この場合、ある一人のユタと固定的な師弟関係を結ぶことはないのです。
本人の意思や必要に応じて、何人もの先輩ユタのもとを渡り歩いて我流で巫法を習得していくのが普通です。
さらに、各所の御嶽(ウタキ。琉球神道における祭祀などを行う神聖な場所)や拝所を巡礼する。
自分の守護霊を探し、神的な啓示を追い求めていくのです。
5、成巫儀礼
通常、シャーマンになるには、何がしかの、成巫儀礼(イニシエーション)が行われます。
しかし、ユタの場合、そうした正式なものはないようです。
自ら修行を積んでいくうちに、噂を聞きつけた依頼者がハンジを求めてやってくるようになるようです。
そして、いつの間にか周囲から真正のユタと認められて、巫業を営み始めるようです。
こうして、カミダーリィの体験から始まって、ユタになっていくのですが、のちに普通の女性に戻ったり、途中で霊能力がなくなってしまう人いるようです。
また、ユタは圧倒的に女性が多いですが、男性の場合もあります。
2、原因がわからない不運・不幸に見舞われた時の、心強い見方
1、「医者半分、ユタ半分」
ここまで、ユタがどういったものなのかをみてきました。
私たちの身に起きる、さまざまな問題の原因には、霊的な障りがあることが多いようです。
こうしたときに人々の悩みの解決の相談にのったり、病気の治療に当たったのが、琉球ユタなどのシャーマン(巫者)です。
また、沖縄には、「医者半分、ユタ半分」と言う言葉があります。
これは、病院に行っても、医学的な見地から病気が見つからない時に、医者が、
「病気の原因は霊的なものかもしれないですよ」
と考えて、ユタに行くことをすすめることがあるそうです。
沖縄という社会全体が、そうした霊的な存在への理解と、敬意があって、そこにユタの伝統が根付いているのですね。
では、次にユタ以外のシャーマンに、どういったものがあるのかをみてみましょう。
2、そもそもシャーマンとは何か?
「シャーマン」と言いましても、一体どういう人を言うのか、ピンとこないかもしれませんね。
シャーマンとは、
特殊な精神状態になることによって、神霊や死者の霊を直接交流して、ご神託や呪い(まじない)などをする人
と言えそうです。
あるいは、沖縄ユタ・はるさんの言葉によれば、
霊界とこの世のつなぐ役目を担い、より良い生き方をアドバイスする人
とも言っています。
シャーマンは、「巫者(ふしゃ)」「巫女(ふじょ)」とも呼ばれます。
では、シャーマンとは、どのようなタイプがあるのでしょうか?
それを次にあげて、今回のしめくくりとします。
3、3種類に分けられるシャーマン
シャーマンになる人は、それぞれにおいて普通の人ではない体験があるようです。
普通の人ではないのですからね。
そこで、「なぜ、その人はシャーマンになったのか」ということにおいて、次の3種類に分けられるようです。
- 召命型(しょうめいがた)
- 修行型
- 世襲型
召命型とは、神霊や精霊に召し出される形で、自分の意思に関わりなくなるものです。
なかば強制的な形でシャーマン化するタイプです。
沖縄のユタがこのタイプになるようです。
修行型とは、本人または周囲(部族・氏族)の意思によって、自発的に学習してシャーマンになるタイプです。
東北地方のイタコがこれに当てはまります。
世襲型とは、代々シャーマンの家系に生まれて人がなるタイプです。
このように、シャーマンにはいろいろなタイプがあります。
また、当然、同じ型のものであっても、個々の違いが出てきます。
同じ琉球ユタでも、男性の人もいますし、その能力や得意分野も違ってきます。
今回は、ユタを中心に、昔から人々の問題解決の大きな味方となってきたシャーマンのおはなしでした。
次回は、イタコについても書いていきたいと思います。
乞う、ご期待!